出社初日の昼前、隣の営業3課の中村課長が林の所にきた。営業3課は米国の輸出担当で、業務内容も大体同じだった。中村課長は若いとき、アメリカに留学し、駐在員として長くアメリカに滞在したので、林に親近感を持ち、仕事上もいろいろと林を助けていた。
「アキ君、最近元気なの」中村が林に話をかけた。
「昨日、実家の上海から帰ってきました。結構いい調子です」
「中国進出の案件はどうなった。あれは社運にかけた大プロジェクトだよ」
「まだ、合弁相手を選定している状態、ある程度まとまったら、課長と皆さんに報告させていただきます」
「そうか。楽しみな。話が変わるけど、アキ君って彼女いるの」中村は林が彼女と分かれたことを事前に確認したようだ。
「分かれたばかりなんですけど」上司にはうそができないから、正直に言った。
「それはよかった。お世話になった人のお嬢さんが結婚相手を紹介してもらいたいって」
「僕でいいですか」
「アキ君、なかなか優秀だから」
「僕が外国人って大丈夫ですか」林はいつものようにこのことを確認した。
「相手に説明したよ。かなり優秀の中国人でかまわないかと確認したけど、相手は全然問題ないと答えた」
「そうですか」林は断りたいけど、適切な理由が見つけなくて困っていた。
林の困った顔を見て、中村が付け加えた。
「相手が27才。親が元地方テレビ局の役員で、一人娘、可愛い子だよ。会うだけでいいよ。後のことは後で決めればいいじゃない」
林はお世話になった上司の紹介をそう簡単に断れなかった。ちょっと考えてからニコッと笑って言った。
「じゃ、中村課長のお言葉に甘えて」
「相手にオーケーって言ってもいいかな」
「宜しくお願いします」
日曜日のお見合いが決まった。
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