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A社との交渉 其の2


 昼の関空発の飛行機を乗って、上海の浦東空港ターミナルに着いたのが午後3時ぐらいだった。空港の税関を出ると、A社の王克剛総経理が自ら迎えてきた。マイクロバスで張家港市に直行し、張家港のホテルにつく時はもう午後7時半回ったところだった。チェックインして簡単に荷物を整理した後、宴会場に誘導された。

五つ星のホテルもあって、内装が非常に豪華で派手な赤色と金色がふんだんに使われていた。中国式の大きな丸テーブルが置かれたレストランの個室に入ると、すでに何人かの中国人関係者が待っていた。A社の副総経理と財務経理以外に、市の張副市長と市の財政局の局長も来られた。そのほかに30代半ばの妖艶な女性がいた。女性は王総経理の秘書だと紹介された。

 中国式の自己紹介した後、副市長が乾杯の音頭をとり、宴会が正式に始まった。佐野部長は張家港市に来たのが今回2回目で、まだ中国式の豪華な宴会に多少ビックリしたが、他の4人はもうすでに慣れきっていた。

 王の通訳を通して、佐野部長と中国側の人が日中関係やら今後の仕事の発展やらお互いにべた褒めしていたが、林は伊藤課長と鈴木と翌日交渉項目を話し合っていた。

 翌日の仕事があるので、この日の宴会は2時間で終わった。佐野部長と王が中国側の人にお酒を勧められ、かなりの酒を飲んで顔が真っ赤になったが、林と伊藤と鈴木はほとんど酒を飲んでなかった。

 林は部屋に戻り、シャワーを浴び、資料を簡単に目を通した後、早く寝ようと思った。ホテルの電話で夏美に電話をして、ホテルの電話番号と部屋番号を夏美に教え、折り返し電話をしてもらった。

 「もしもし、夏美、元気?」

 「ハイ、元気よ。アキ、元気?」

 「元気よ。フロントとうまく話したね」

 「毎回のことよ。もう慣れたから、でも五つ星もあってフロントの英語が非常に流ちょうだった。今度中国に行ってみたいな」

 「連れて行くよ。今回のプロジェクトが終わったらね」

 「行きたい、行きたい。忘れないでね。約束よ」

 「分かった」

 「今日も中華料理の本を買ったよ。ママと一緒に勉強中。レシピに従って作ったけど、まずかった。パパが変な顔をしてた。どこかが間違ったかな」

 「頑張ってるね。今度食べてみるよ。まずいやつは困るな」

 「帰るまできっと美味しく作れると思う。夏美が変わった、林さんに感謝しなきゃってママに言われた。」

 「恐縮ですよ。何もしてないから」

 「そばにいるだけで最大の励ましよ、アキは。それで、日本にいつ戻れるの」

 「木曜には帰れると思う。よほどのことがない限り、木曜に戻る」

 「早く帰ってほしい」

 「そのうちにうっとうしくなるよ」

 「そんなことは絶対ない」

 「明日の仕事がハードだから、ごめん、早く寝たい」

 「じゃ、早く寝て、夏美の夢でも見てね。おやすみ」

 「おやすみ」

 林が電話を切った後、すぐに寝た。どれぐらい経ったか、林がドアのノック音を聞こえた。

 「だれだろう」と思いながら、壁にあった時計を見た。12時半だった。

 「だれですか」林は日本語と中国語両方で聞いた。

 反応がなかった。ドアを開けたら、見知らぬ若い女性が立っていた。女性は黒のナイトドレスで、背が高く化粧が非常に濃かった。

 「誰ですか」林は中国語で聞いた。

 「林さんですか」女性も中国語で答えた。

 「何かご用がありますか」

 「お供にしてもよろしいでしょうか」

 「貴方を呼んだ記憶はないけど」

 「総経理はすでにお金が支払ったから、ご心配なくお供させてください」

 「A社の王総経理ですか」

 「どこの総経理は重要じゃないでしょう。ご心配なく、これも持っていますよ」若い女性が言いながら手の平に持っていたコンドームらしきモノを見せた。

 「ごめん、僕が呼んだ覚えがないから帰ってください」

 若い女性が何か言おうと思っていたが、言葉を見つからず不機嫌そうに帰った。

 林は中国に出張するとき、そういうことを勧められたことはあったけど、直接部屋に来られた経験がなかった。かなり不思議そうに思いたが、睡魔に勝てずまた寝た。

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