「林さん、今回大変お世話になりました」王が中国なまりの日本語で林に話をかけた。
「こちらこそ、これからも宜しくお願いします」林は日本語で答えた。
「今日、最終日だから楽しんでください」
「毎日のおもてなし、ありがとうございます」
「旅の恥はかき捨てという日本のことわざがあるでしょう。思う存分に遊んでください。遠慮はご無用ですよ」
「たがを外してないって」
「日本の男性は昼間はまじめだけど、夜は自由奔放じゃない」王が急に中国語で話した。
林は若い女性のことを思い出して、ようやく王の真意を悟った。
「お言葉に甘えて」林も中国語で答えた。
宴会は12時まで続いて、みんなかなりのお酒を飲んでいた。途中、夏美に心配させないように部屋に戻って夏美に電話した。
部屋に帰り、シャワーを浴びた。シャワーを浴びながら王の言ったことを考えて、佐野の遅刻のことと今日観光に来なかったことを思い出し、すべてひらめいた。
部屋がノックされ、林がドアを開けると、この前の若い女性が立っていた。
「一緒に楽しもうよ」明らかにお酒を飲んでいて、話しながら強引に林の部屋に入ろうとした。
「すみませんが、ボスに伝えてください。僕はこういうことが好きじゃないので」林は中国語できっぱりと断った。
「林さんのことが大好きだったのに」女性が泣きそうな顔して言った。
「ごめんなさい。帰ってください」林が言いながら力任せで女性を外に押してドアを閉めた。
翌日、S社の5人は用意されたマイクロバスに乗って上海の空港に送られ、帰途についた。この日、林は会社に戻らず直接山科のアパートに帰った。
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