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朝の眉毛事件


 林が目覚めた時、もうすでに11時すぎだった。ベッドの横に見ると、奈々子がいなかった。

 「おはよう」奈々子が目覚めた林に台所から声を掛けた。

 「おはよう、今何時」林はあくびしながら奈々子に聞いた。

 「早く起きて、もう十一時すぎよ」奈々子が催促した。

 奈々子は朝食の支度をしていて、横顔しか見えなかった。シャワーを浴びたか、濡れた髪に林のシャツを着て、パンティが微かに見える程度で、林はすごくセクシーに感じた。

 「ごめん、片付けてくれたんだ。夕べ急いで英会話教室に行ったから片付けなかった」林は綺麗になったテーブルを見て言った。

 「朝食の準備できたよ」

 奈々子が林に体を向けたとき、林は我が目を疑った。奈々子の顔には眉毛がなく、元もと肌が白いこともあってまるで源氏物語の人物だった。さすがに聞けなくて、

 「先にシャワーを浴びるよ」と不思議な顔をしながら急いでバスルームに入った。

 「別人ってわけないだろう。夕べは確かにあったよ。なかったけぇ」林は記憶を探りながらシャワーを浴びた。

 バスルームを出たとき、テーブルの上に目玉焼き卵と焼きパンと牛乳はすでに並んでいた。林は台所で皿洗いした奈々子を背後から抱きしめ、匂いを嗅いだ。

 「確かにナナの匂いだ」と内心確認したあと、「ありがとうね」とやさしい声を掛けた。

奈々子は首を回して口づけした。

 「口に合うかな」奈々子が林に訪ねた。

 「ナナがつくったからまずくないよ」

 林は奈々子の目線を避け、黙々と目玉焼き卵を食べ、頭の中に奈々子の眉毛のことから離れなかった。

 「何かあったの、それでも料理が口に合わない」奈々子が不思議そうに林に聞いた。

 「なにもない」林はやはり我慢できなくて軽い弾みで奈々子に聞いた。「眉毛は?」

 「私の眉毛のことで先から独り笑いしてたの。なにかおかしいことでもあった」奈々子が理解不能で戸惑った。

 「夕べ眉毛があったよね」

 「あぁ〜、あれは描かれたモノ。先シャワーで落としたよ」

 「ナナ肌白いから、なんか源氏物語の人形さんみたい」林がついに我慢できなくて声を出して笑った。

 「源氏物語の人形みたいって、ミンひどいよ」奈々子は怒りっぽい口調で話した。

 「ごめん。からかうつもりはないよ。女性の化粧の常識が知らないだけ、ギャップに結構びっくりしたよ」

 奈々子は俯いて黙っていた。

 「後で化粧していつもの綺麗なナナの顔をみせてね。お願いします」林は奈々子をあやした。

褒められた奈々子が微笑みに戻った。

 「料理口に合うの?」

 「もちろん最高においしいよ、毎日作ってもらいたいなぁ」林は大げさに褒めた。

 食事の後、奈々子が化粧をしはじめた。林は特にやることはなく、奈々子の化粧の全光景を注意深く見ていた。変わりゆく奈々子の顔に何度も目を丸くした。

 「これからどうしよう」化粧が終わった奈々子に林が聞いた。

 「一回帰らないと」

 「それはそう。送りましょうか」

 「近いからいいよ」

 「分かった。後で電話して」

 濃厚なキスをしてから、奈々子は林のアパートを後にし、自宅に帰った。

 林は特にやることはなく、音楽を聴きながら今までの出来事にふけていた。


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