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第4章 挫折


 4月の中旬とはいえ、シャツ一番だけはちょっと肌寒い天気だった。先週あいにくの雨、花見を見に行くチャンスを損なった。出かけるのが絶好の日和だったが、林と奈々子はそれどころではなかった。二人は朝から就活の面接会のように、勝手に色々な状況を想定して対策を講じてきた。緊張し一生懸命にやっている林を見て、奈々子は言葉では表せない爽やかな気持ちだった。

 日曜の午後5時ぐらい、奈々子に連れられ、林は奈々子の自宅に向かった。

「 お邪魔します」林は玄関で挨拶してリビングに入った。

 古びた一戸建てだった。玄関に入ると、広めのリビングが現われた。古い皮ソファセットが壁に沿って置かれ、その真正面に旧式大型テレビがテレビ台の上に立っていた。リビングの隣に和室があって、その真ん中に大きな高級和風テーブルセットが置いてあった。全体が古く感じ、壁紙があちこちシミと汚れが目立っていた。しかし、部屋全体は物が多い割にきちんと整理整頓されていた。時々、庭にあった犬小屋から犬の鳴き声が伝わってくる。台所の匂いか、飼い犬の匂いか、建物の老朽化の匂いか、それともすべてが混ざり合った匂いか、いままで嗅いだこともないような匂いが部屋中に充満し、林の鼻と頭を刺激していた。テーブルの上にすでに置ききれないほどの料理が置いてあった。

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