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英会話教室其の2


 「What is your name?」と林は質問した。

 「My name is Nanako Sakamoto」と日本人のカタカナ発音を混じりながら小声で返事した。

 「What is your name?」と同じ質問が今度奈々子は発した。

 「My name is Lin Ming Ying」と林は答えた。林は奈々子の戸惑いを予測していたため、「I’ma Chinese, from Shanghai China.」と付け加えた。奈々子が一瞬首を傾げた。目の前の男性が日本人ではなく外国人だと夢にも思わなかった。

 「I live in Japan for a long time. Iwork for a major Japanese food company.」林は奈々子の戸惑いを見てさらに付け加えた。「major」と「Japanese」の間にわざと間を空け、さりげなくアピールした。

 奈々子が林のアピールを理解したように、ニコリと笑い、

 「I work for a securities company.」と返事した。

 多少慣れてきただろうか、奈々子の声が先より大きくなってきた。奈々子の匂いが相変わらず林を刺激していた。林は一回背筋を伸ばして姿勢を立て直し、愛想笑いで返したが、足の方が不自然にもぞもぞと動いていた。ちょうどそのとき、二人の目線が遇った。二人ともすぐに神経質的に相手の目線から目をそらした。「プッ」と奈々子が口元を抑えながら小声で笑った。奈々子は林の不自然の動作を見てどうしても笑いこらえられなかった。林は笑い声の意味を完全に理解していた。大きく深呼吸して体を何とか落ち着かせようとした。

 「Why did you laugh?」なぜか林が理由を知りながらわざと聞いてしまった。質問を発した後、林は後悔していた。

 「For ……」と奈々子の答えがとまっていた。「林のぎこちない動作だから」ってもちろん言うわけはいかないから、失礼しないように頭をフル回転して言葉を探していたが、適切な答えを見つかることができなかった。

 林は自分の愚かな質問にすぐ察知し、直ちに別の質問をして話題を変えた。

 「Was you late because of your workingovertime?」(残業があったから遅刻しただろうか?)

 「Yes, I did.」奈々子は愉快に答え、林の気配りに胸を下ろし、彼と一緒なら英会話がやっていけそうな感じがした。

 林は質問をやめ、奈々子から質問されるのを待っていた。

 ちょっと長めの間をあけてから、「What kind oftransport did you come to school?」発音が間違わないように一単語一単語ゆっくりと質問した。

「I came to school by train.」林は直ちに答えた。

ちょうどそのとき、Andre先生が林のテーブルに来られ、英語で話しを掛けた。林と奈々子は必死になって先生の英語を理解しようとしていた。

 英会話に集中したせいか、あっという間に終わる時間になった。英語で簡単な挨拶した後、「Seeyou Saturday!」とAndre先生が大きな声で挨拶した。

 林は本能的に奈々子と話したがっているから、彼女に合せて鞄などをゆっくりと整理し、二人前後にして教室を後にした。

 「酒本さんはお近くですか?」林は奈々子に話をかけた。

 「ええ、歩いて5分のところに実家があります。今日大変お世話になりました」奈々子は礼儀よく答えた。

 「こちらこそお世話になりました。僕も近くに一人暮らししています」林はゆっくり返事した。

 「話が変わりますが、酒本さんの英会話がとても上手ですね」林はどうしても目の前の女性を褒めたがっていた。いきなり綺麗とか美人とか褒めるとあまりにも失礼なので、唐突に奈々子の英会話を褒めた。

 奈々子はちょっと嬉しそうに笑って、「そうですか、林さんの方がよほどうまいじゃないですか。発音が綺麗で本当に羨ましい限りです」義理で褒め返すことよりも奈々子は本当にそう思っていた。

「お茶でもいかがですか」と林は奈々子を誘いたかったが、軽く思われたくないから、口先まで出かかった言葉をのみ込んでしまった。

 「そういうことはないですよ」と林は謙虚な態度をわざとみせた。

 「林さんの日本語はうまいですね」奈々子は林を褒め続けた。

 「日本には8年間もいたので、うまくなるのが当り前です。英語は十何年も勉強したけど、ほとんど使い物にはなりません」林は相変わらず低姿勢だった。

 話している内に、二人が三条通外環の交差点に付いた。

 「酒本さんはどの方向ですか?」

 「薬大の方向です。すぐですよ」市内の方向を指しながら話した。

 「そうか。僕は三条通を渡ったところです。近いですね」

 「それでは、お疲れ様です」

 「お疲れ様です。また、土曜日です。」

 林は笑いながら軽くお辞儀をした。奈々子も同じように愛嬌よくにっこりと笑ってお辞儀を返した。

 二人が別れた。


 さすがに10月になったから、林は夜の風を少し肌寒く感じ、ずっと手で持っていた背広を着て、自分のアパートに向かった。奈々子に一目惚れにしたじゃないかと林は一瞬思った。「そんな馬鹿な、この俺が一目惚れなんかありえないよ」と林は独り言を言った。

 時間が九時前になって、道に歩いている人はほとんどいなく、肌寒い風に吹かれて余計寂しく感じられる。木の葉っぱが半分ぐらい黄色くなって、風の中ゆらゆらしている。林はコンビニを寄り、お弁当とサラダと缶ビール一本を買ってアパートに帰った。

 部屋に入って缶ビールを開け、テレビをつけた。特に見る番組もなく、缶ビールを2、3口飲んでシャワールームに入った。シャワーを浴び、お弁当とサラダを食べ終わったとき、すでに十時半になった。翌日の仕事の準備をして、林はベッドに付いた。

 林は帰ってから、奈々子のことをほとんど考えなく、枕に付くと、奈々子のことを思い出した。「かわいい子な」と思った瞬間、「こんなはずはないよ」と脳が勝手に威張って別のことを考えるようになった。そうしているうちに、林は眠りについた。

 林は眠ってから何時間経ったかが分からないけど、急に目が覚めた。怖い夢を見た。

 蛇のような妖精の出した魔力的な香りに惹かれて林が山の洞窟に入った夢だった。真っ暗の洞窟に入った途端、怖く感じて目が覚めた。

 「こわぁ」と林は独り言を言った。

 林は夢のことをあまり深く考えず、再び目を閉じて寝た。

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